この記事を読むと、飲食店の発注管理システムの種類・費用・移行の手順が分かります✨
- 💬 食材の発注がExcel・LINE・電話・手書きメモにバラバラで、何をいつ頼んだか分からなくなる
- 💬 発注ミスや頼み忘れで、仕込みの直前に欠品が発覚する
- 💬 月末の棚卸しに数時間かかるのに、原価率がいつも「だいたい」でしか分からない
- 💬 発注担当の店長が休むと、誰も食材を頼めない
食材発注がExcelと電話のままだと、現場で何が起きるのか
以前、兵庫県尼崎市の居酒屋からご相談をいただいたことがあります。
魚は電話、野菜は手書きのメモをFAX、酒類はLINEと、仕入れ先ごとに発注方法が違いました。その内容を店長が閉店後にExcelへ打ち直していて、「頼んだつもり」と「届いた量」がずれるのが日常でした。
大阪府箕面市のラーメン店からも、似たご相談がありました。
麺・肉・野菜・調味料の4社への発注を、奥さまがノートに手書きで記録している状態です。仕入れ単価の推移が誰にも見えず、値上げが続いても、メニュー価格をいつ見直すべきか判断できずにいました。
食材の発注は、営業後の深夜や仕込み前の早朝に集中します。疲れている時間帯に、業者ごとに違う方法で、しかも人の記憶に頼って行う。ミスが出ない方がおかしい作業です。
数字でも影響は出ています。農林水産省の推計(2023年度)では、外食産業から出る食品ロスは年間66万トンで、事業系食品ロス全体(231万トン)の約29%を占めます。加えて、食材価格の高騰で飲食店の原価率は36%前後まで上がってきたという業界メディアの解説も出ています。1つ1つの頼みすぎ、頼み忘れが、そのまま利益を削る時代です。
「なんとなく発注」が抱える3つのリスク
- ⚠️ 頼みすぎ:使い切れず廃棄になり、原価率を押し上げる
- ⚠️ 頼み忘れ:欠品でメニューが出せず、機会損失になる
- ⚠️ 属人化:ベテランの頭の中にしか発注の基準がなく、休みや退職で回らなくなる
note などで発信している現役の店長・コンサルタントの方々も、口をそろえて「勘と根性の発注」の限界を指摘しています。過去数か月の出数から根拠を持って発注量を決める、という考え方です。私たちも同じ意見で、その根拠を残す道具がExcelでは足りなくなる、というのが今回のテーマです。
Excelの発注管理が限界を迎える現場のリアル
よく「Excelで在庫表と発注表を作れば十分」と言われます。
ところが、居酒屋やラーメン店、カフェなど、実際に飲食店の現場に入ると別の壁にぶつかります。
Excelは、パソコンの前に座れる人しか入力できません。厨房で在庫を数えた人が紙にメモし、閉店後に店長が打ち直す。この転記の時間に、打ち間違いと入力漏れが生まれます。しかも、発注先ごとに締め時間(この時刻までに頼まないと翌朝届かない、というリミット)が違うため、「入力してから発注」ではもう遅い日が出てきます。
これを知らずに表を作り込むと、店長の自宅作業が増えるだけで、現場は何も楽になりません。弊社が伺った店舗でも、Excelの発注表が「店長専用の宿題」になっているケースが大半でした。
なお、Excel管理そのものの限界サインについては、Excel管理はいつ卒業すべき?5つの限界サインで解説しています。この記事では、食材の発注・仕入れ・原価に絞って進めます。
飲食店の発注管理システムは2種類。パッケージ型とオーダーメイド型の違い
発注管理システム(=食材の注文・入荷・在庫・仕入れ額をまとめて記録する仕組み)には、大きく分けて2種類あります。
| 項目 | パッケージ型(既製のクラウドサービス) | オーダーメイド型(自店専用に開発) |
|---|---|---|
| 費用の目安 | 初期0〜10万円前後、月額3,000〜5万円前後 | 1〜3店舗の開発で150万〜400万円程度という公開相場がある(機能を絞れば下がる) |
| 始めやすさ | 申し込んだその月から使える | 要件整理から完成まで1〜3か月 |
| 強み | 安く早い。標準的な仕入れの流れに強い | 今の発注の流れ、仕入れ先の癖、既存のレジやLINEにそのまま合わせられる |
| 弱み | 仕入れ先が電話・手書き中心だと、使わない機能が増えて持て余す | 初期費用が高い。作り込みすぎると割高になる |
| 向いている店 | 仕入れ先がシステム対応済みの店、1〜2店舗で標準的な運用 | 仕入れ先が個人商店中心、メニューが日替わり、独自の締め時間が多い店 |
費用は、既製クラウドの月額と、システム開発会社が公開している原価管理システムの見積相場を参考にした目安です。実際の金額は、店舗数や機能で大きく変わります。
パッケージ型を選ぶときの3つの確認点
- 💡 今の仕入れ先が使えるか:電話・FAXしか受け付けない業者が多い場合、機能を半分も使えないことがある
- 💡 スマホで在庫を数えられるか:パソコン入力前提だと、Excelと同じ「店長の宿題」になる
- 💡 データを書き出せるか:将来乗り換えるときに、過去の仕入れ単価を持ち出せないと困る
「パッケージが合わなかった」という理由でのご相談は珍しくありません。契約を急がず、無料トライアルで実際の仕入れ先を3社ぶん入れて試してから決めるのが安全です。
よくある失敗:最初から自動発注まで作ろうとする
もっとも多いのが、「せっかく作るなら」と、AIによる需要予測や自動発注、レシピ原価計算、レジ連携まで一度に盛り込むパターンです。
すると見積が膨らむだけでなく、現場が使いこなせません。以前ご相談いただいた店舗でも、多機能なシステムを入れたものの入力項目が多すぎて、3週間でスタッフがExcelに戻ってしまったことがありました。残るのは、システムとExcelの二重入力という最悪の状態です。
AIによる在庫・発注の自動化は、たしかに魅力的です。仕組みや費用はAIで在庫管理を自動化する仕組みと費用感で紹介していますが、それは「記録が正しく貯まってから」の次の段階です。
事例:尼崎市の居酒屋が、発注と棚卸しを1つの画面にまとめた
前述の兵庫県尼崎市の居酒屋は、駅から徒歩6分、商店街の並びにあるお店です。スタッフは6名(社員2名・アルバイト4名)で、発注担当は店長のみ。仕入れ先は6社でした。
課題
- ⚠️ 発注方法が仕入れ先ごとに電話・FAX・LINEとバラバラ
- ⚠️ 月末の棚卸しに約3時間40分かかり、原価率も翌月中旬にならないと分からない
- ⚠️ 店長が休むと、発注が止まる
解決内容
弊社は、機能を「発注」と「棚卸し」の2つだけに絞ったオーダーメイドのシステムを、スマホ向けに開発しました。
仕入れ先ごとの品目と単価を最初に登録しておき、厨房で在庫の数量を入力すると、不足分の発注書が仕入れ先ごとに自動で作成されます。送信は、LINEで受けてくれる業者にはLINE、そうでない業者にはFAXやメール用の文面をコピーして使う形にしました。仕入れ先側の使い方は変えないのがポイントです。これにより、店長が閉店後に自宅で打ち直す時間がなくなります。
結果
- ⭐ 1日の発注作業:約70分 → 約27分
- ⭐ 月末棚卸し:約3時間40分 → 約1時間25分(スマホで数えながら入力)
- ⭐ 原価率:稼働前の月33.9% → 稼働から6週間後の月32.4%(メニュー見直しと合わせた結果)
- ⭐ 頼み忘れによる欠品:導入前の6週間で3回 → 導入後の6週間で1回
店長からは「原価率が翌月まで待たなくても見えるようになり、廃棄が増えた週にすぐ気づける」という声をいただきました。
弊社は兵庫・大阪・京都を中心に、飲食店を含む19業種のご支援をしてきました。実際に開発していると、飲食店の発注には「仕入れ先ごとの癖」という共通の壁が必ずあり、そこに合わせて作れるかどうかが成否を分けます。
まずこの3つだけ。発注管理システムで最初に手をつける順番
予算と時間が限られているなら、最初にやるのは3つだけです。
1. 仕入れ先・品目・単価・締め時間を1枚に整理する
システムを選ぶ前の作業ですが、ここが土台です。品目は全部ではなく、金額の大きい上位20品目で構いません。
2. 発注書の自動作成に絞る
在庫を入れると、仕入れ先ごとの注文内容が自動でできあがる。この1機能だけで、発注時間は大きく減ります。
3. 月末の棚卸しをスマホ入力にする
紙に書いて打ち直す作業をなくします。棚卸しの数量と仕入れ額が入れば、原価率は計算で出せます。
レシピ別の原価計算、POSレジ(=会計と売上を記録するレジ)との連携、自動発注は後回しで構いません。この3つが定着してから足すほうが、費用も失敗も小さく済みます。
Excelから発注管理システムへ移行する5ステップ
移行は「ある日切り替える」のではなく、並走させながら段階的に進めます。
- 今の発注の流れを書き出す(1週間):誰が、いつ、どの方法で、どの仕入れ先に頼んでいるかをメモする
- 品目・仕入れ先・単価を整理する:上位20品目から。ここまでは今すぐ自分でできる
- パッケージかオーダーメイドかを決める:仕入れ先が電話中心ならオーダーメイド寄りで考える
- 1つの仕入れ先で2週間並走する:Excelとシステムをあえて両方で運用し、数字が合うか確認する
- 全仕入れ先へ広げ、Excelを閉じる日を決める:期日を決めないと、二重入力が永遠に続く
正直に言うと、「飲食店はAIで全自動発注を目指すべき」という話は、仕入れ先が個人商店中心で、メニューが週替わりの店には当てはまりません。
需要予測の精度は、過去の記録の質で決まります。記録がExcelと手書きに散らばっている店では、AIに渡す材料そのものがありません。
だからうちでは、自動化の話より先に、発注書の自動作成と棚卸しのスマホ入力から提案しています。
逆に言えば、仕入れ先が5社以上ある店や、月末の棚卸しに3時間以上かけている店には、システム化が最も早く効きます。先ほどの居酒屋のように、発注と棚卸しの2機能だけでも作業時間は半分以下になり得ます。記録が正しく貯まりはじめれば、その先のAI活用にも進めます。「うちの場合は何から始めるべきか」だけでも、まず相談してみてください。
なぜ、発注の効率化を後回しにする店が多いのでしょうか。理由は単純で、「今日の営業」が優先され、仕組みを見直す時間が取れないからです。だからこそ、外部の手を借りる価値があります。
あなたのお店は大丈夫?発注管理チェックリスト
- ✅ 発注方法が電話・LINE・FAX・手書きなど3種類以上に分かれている
- ✅ 月末の棚卸しに3時間以上かかる
- ✅ 頼み忘れや頼みすぎによる欠品・廃棄が月に1回以上ある
- ✅ 発注担当の店長が休むと、誰も食材を頼めない
2つ以上当てはまるなら、発注管理をシステム化するタイミングです。
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自分で改善したい方へ
まずは仕入れ先・品目・単価・締め時間を、金額の大きい上位20品目だけ1枚にまとめることから始めてみてください。システムを入れる前の準備として、この1枚がそのまま要件のたたき台になります。
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